牧場の少女カトリ各話紹介（３１

あらすじ

　カトリは刺繍がとても上手になってきた。ロッタの教え方がうまいし、カトリも熱心だった。しかし、カトリは時々糸の数を間違えて失敗することがあった。
　ヘンリッカは、自分より楽な仕事をしているカトリに不満で、意地悪をした。カトリは、できるだけヘンリッカの仕事を手伝うことにした。
　ロッタとカトリは、スウェーデンに送ってもらうため刺繍を運送屋まで馬車で運んだ。ロッタは馬車の御者には自信があった。カトリは、運送屋で運賃の計算をした時、掛け算ができず、足し算で計算した。カトリは、掛け算を覚えたいと思った。
　帰りに郵便局へ寄ると、カトリにアッキから郵便物が届いていた。アッキはソフィア先生とも友達で、カトリが医者になりたいと夢見ていることをソフィアから聞いていた。アッキは、カトリに、アッキの大学の教授コッホネンが書いた算数の本を送ってくれた。アッキはカトリを応援してくれていた。カトリは幸せだった。

第３２話「魔法の本と悪魔」

あらすじ

　今日は牧草刈りの日、カトリも牧草刈りを手伝った。ヘンリッカは、カトリは役に立たないと思っていた。ところが、お昼のお弁当を持っていったとき、カトリの働きぶりを見たヘンリッカは驚いた。ヘンリッカは悔しそうな顔をして帰って行き、それ以来カトリに意地悪はしなくなった。
　靴屋のラスキ親方がクウセラ屋敷に来ることになった。ロッタは、雇い人全員とクラウスに新しい靴を作ることにした。
　カトリは算数の勉強を続けたが、２桁の掛け算が分からなかった。ロッタは、計算の基本である九九を覚えなければならないと言った。カトリは猛然と覚え始めた。仕事中にもずっと九九を唱えた。
　クラウスを連れて牧場に行ったときも、木陰で算数の本を読んで九九を暗唱していると、カトリの前に靴屋のラスキ親方が現れて、不思議そうにカトリを見つめて、「魔法使いにでもなろうというのかい。」と言った。そして、「一生懸命勉強すれば魔法使いになれる。」と言って、若いころ出会った悪魔の話をしてくれた。その話はおもしろかったが、ラスキは、最後に「何のために勉強するんだい？」と言った。カトリは、言葉がなかった。

まぬけな悪魔（フィンランド民話）

　ラスキが荷車を引いて森を歩いていると、大きな樅の木の中から助けを呼ぶ声がした。それは、樅の木に閉じ込められた悪魔だった。悪魔は、助けてくれたら何でも願いをかなえてやると言った。木の幹の穴に麦わらの茎を刺し込むだけでいいというので、ラスキは、荷車に積んでいた麦わらの茎を１本取って、木の幹の穴に刺し込んだ。すると、煙が噴出し、大きな悪魔が出現した。
　ラスキは、老いぼれた馬を若々しい馬に変えてもらった。もう一つ願いを聞いてもらおうとしたが、悪魔は願いは一つだけだと言った。ラスキはあきらめたが、悪魔に、「本当に麦わらに通れるのか見せて欲しい。」とお願いした。得意になった悪魔は麦わらを通って木に幹の中に戻った。ラスキは、すかさず麦わらを抜いたので、悪魔はまた出られなくなった。若い馬をもらったラスキは、「助けてくれー！」と悪魔が叫ぶ声を聞きながらその場を立ち去った。

第３３話「喜びと悲しみ」

あらすじ

　靴屋のラスキ親方と弟子のクスターが、クウセラ屋敷の雇い人とクラウスの新しい靴を作った。しかし、クラウスの靴はぶかぶかで、ヘンリッカの靴は少し小さかった。それを見たクスターは自信をなくして外に出ていった。カトリは落ちこんで座り込んでいたクスターに声をかけた。クスターは、５年もラスキ親方についているのに失敗ばかり、カトリの靴がうまくできなければ靴職人をやめると言った。
　ロッタにカルロから手紙が来た。ロッタは主人の無事を喜んだ。カトリは、幸せで、こんな生活がいつまで続くか怖かった。
　翌朝、クスターはカトリに、「君の靴が上手くできてもできなくても、俺は見習いをやめないことにした。５年でダメなら１０年。」と決意を話した。カトリはやっぱり自分の靴はぶかぶかなんだ思ったが、出来あがった靴を履いてみると、自分の足にぴったりだった。
　ラスキ親方が行ってしまうとクウセラ屋敷はまた静かになった。カトリは、昼間はロッタと刺繍をしながら過ごし、夜は本を読んだり勉強した。取り入れの秋が来て、カトリも畑へ出たり、麻の取り入れや羊の毛の刈り取りを手伝い、忙しかった農作業が一段落した頃、ビリヤミとアリーナの結婚式が行わた。結婚披露のパーティーの最中、軍からの特別郵便がロッタに届いた。それを読んだロッタは、青ざめて、席を立ち、部屋に戻った。かけつけたカトリに、「出発の支度をしなくては、いますぐ。」と言って倒れた。それは、カルロが戦場で負傷しヘルシンキの病院に運ばれたという知らせだった。

名（迷）言集

夕食のとき、戦争の話題になり
カトリ「嵐や吹雪と違って戦争は人間が始めたものだから、人間がやめさせることができるはずだわ。」

カトリ「やっぱり、私の新しい靴もぶかぶか～！？」
クスター「そんなことないよ。おれだって慎重にやったつもりだから。」
カトリ「きっとぶかふかなんでしょうね。私の新しい靴。」
クスター「ぶかぶかとはかぎらないよ。」
カトリ「ぶかぶかに決まってるわ。」（意外としつこいカトリ）

第３４話「ヘルシンキ行き」

あらすじ

　ロッタは、カルロのことが心配で、早くヘルシンキへ行こうとするが、明日にならないとヘルシンキ行きの汽車はなかった。ロッタは、クラウスが泣いてついていくと言うので、クラウスの面倒をみてもらうためカトリも連れて行くことにした。翌朝５時、ロッタ、クラウス、カトリは、ペッカ馬車でサロの駅まで送ってもらった。ペッカは、汽車は馬車より遅いと思って、ゆっくり馬を走らせていたが、汽車にあっという間に抜かれ、駅に急いで、なんとか汽車に間に合った。
　ヘルシンキに着くと、すぐに馬車でカルロの入院する病院に向かった。途中、カトリは、ヘルシンキの駅や街の大きさにすっかり驚いた。
　ロッタは、クラウスとカトリを外に待たせ、カルロの病室に入った。カトリはしばらく待ったが、病室からは何の気配も感じられなかった。病室からロッタが青い顔で出て来た。ロッタは、クラウスを抱きしめて、泣きながら「お父さんが亡くなったわ。」と言った。

名（迷）言集

サロの駅に向かう馬車での会話より。
カトリは、タンペレで生まれ、３歳のとき、父が亡くなり、母サラが働かなければならなかったので、タンペレから汽車に乗って、パルキ村の祖父ユリスに預けられた。
ペッカ「カトリはも、都会で生まれたのか。」
カトリ「それがどうかしたの。」
ペッカ「別にどうもしないよ。ただ言ってみたかっただけさ。」（ペッカの寂しそうな言い方が心に残ります。）

第３５話「父と娘」

あらすじ

　カルロは、ロッタの到着する直前に亡くなっていた。ロッタは、クラウスには最後の痛ましい父の姿を見せなかった。遺体はヘルシンキ市内の軍人墓地に葬られた。クラウスは、父が亡くなったことを理解できなかった。カトリは、「坊ちゃんのお父さんは天国に召されたのです。」と言った。
　ロッタは、疲労のため教会で倒れた。ロッタは、ホテルで寝込んで、帰るのを延ばした。しかし、持って来たお金が底を突いていた。ロッタは、父の友人で、港の近くのコッコ貿易商会の社長ヘルマンからお金を借りることにした。
　翌日、カトリはロッタの手紙を持ってコッコ貿易商会を訪ねた。しかし、社長は来客中で、２時間も待たされた。ようやく手紙を読んだ社長は慌てて、事務員にさっきまで会っていた来客を呼び戻すように指示した。その人は、ロッタの父エリアスだった。カトリは、急いでエリアスを追いかけた。
　思いがけず父と再会したロッタは体も回復し、父と途中まで汽車で一緒に帰った。別れ際、エリアスは、カトリに、ロッタのことを頼むと言った。そして、ロッタに、帰りたくなったらいつでもトゥルクへ帰ってこいと言った。
　カトリたちがクオレリシ村に帰り着くと、村には雪が降りはじめ、長い冬がやってきた。人々は家の中に閉じ込められた。カトリは、冬も精一杯働き、そしてまた勉強もした。ペッカは、何度も、カトリからヘルシンキの話を聞きたがった。

第３１話 「本が送られてきた」

第３２話 「魔法の本と悪魔」

第３３話 「喜びと悲しみ」

第３４話 「ヘルシンキ行き」

第３５話 「父と娘」

第３１話「本が送られてきた」

第３２話「魔法の本と悪魔」

第３３話「喜びと悲しみ」

第３４話「ヘルシンキ行き」

第３５話「父と娘」