探検
翌朝、みんなより早く目が覚めたルーシーとケイトは、近所を探検に行った。川のそばに着いた二人は、裸足になり川に入って水遊びをした。川をさかのぼると、川の中に馬と男がいた。その男は、チャーリーという名で、水を売るため、馬の馬具に付いている樽に水を入れていた。チャーリーが行った後、二人は、しばらく水遊びをした。すると、アシの草むらの向こうから、子供たちのはしゃぐ声が聞こえた。ルーシーが様子を見に行ったあと、ビリーがやってきた。ビリーが帰るとルーシーが戻って来た。ルーシーは、ケイトに、原住民が遊んでいたことを話した。二人は、アーサーから、原住民には近づいてはいけないと言われていたので、帰ることにした。

訪問者
帰ってきたルーシーとケイトは、アニーから手伝いを言い付けられた。でも、アニーが、ステッキーが子山羊を生んでいるところだと教えたので、二人は急いで見に行った。ちょうど最後の子山羊が生まれるところを見て、すっかり感動した。朝食後、クララがルーシーとケイトに脂肪からろうそくを作る仕事を指示した。毛糸のひもに脂肪にひたして干して乾かす作業の繰り返しである。ろうそくができるまで何日もかかる仕事で、それを考えるとケイトはいやになった。そのとき、チャーリーが水を売りに来た。アニーは、水を少々買ったが、夫と息子が水汲みをするからと言うと、チャーリーは丘を降りて行った。
それから、原住民の女がやってきて、両手を広げて何か話しかけてきた。ベンが追い払おうとしたが、アニーは、おなかがすいていると思って、パンとお茶をすすめた。原住民の女はお茶をおいしそうに飲んで、パンを食べて帰った。アニーは、子供たちに、原住民にはいつもなにかあげるようにと言った。
そのあとビリーがやって来た。ルーシーは、ビリーに子山羊が３匹生まれたことを教えた。

旧友あらわれる
居留地で知合いになったパーカーが、居留地に残してあった家具を牛車に積んでやってきた。パーカーは、牛を手に入れて、運送業を始めていた。アニーは、パーカーを一家のお茶に誘った。パーカーの話によれば、運送業はもうかるらしかった。お茶が終わると、パーカーは、ルーシーとケイトを連れて、牛に水を飲ませるため川へ行った。

秘密
夏の終わりには、ポップル家の生活も落ち着いてきた。しかし、移民は増える一方なのに、ライト大佐による土地の測量は全く進まず、土地も狭くなり値上がりしていた。
ある日、川のほとりを散歩していたルーシーは、原住民の子供たちが槍投げをして遊んでいるところに出くわした。仲間に入れてもらおうとルーシーが近づくと、一人の小さな女の子が木に登り、枝にぶらさがってみせた。しかし、ルーシーは、原住民に近づいてはいけないと言われていたことを思い出して、今見たことは秘密にすることにした。
ルーシーが家に帰ると、ケイトとけんかを始めた。怒ったアーサーは、仕事の手伝いを命じた。仕方なくろうそく作りをすることにしたが、ケイトは、「あんたのせいよ。」と言って、ルーシーをこづいたので、ルーシーは泣きじゃくった。クララは、二人のことは無視してイギリスのメアリーおばさんに手紙を書いた。クララは、ときどき、ジョンのことを思い出してぼうっとすることがあった。
クララは、土曜日の午後、ルーシーとケイトに、縫い物や聖書の暗唱をさせた。日曜日の午前中は、一家で礼拝や日曜学校に出かけた。ある日曜日の午後、アーサーがパークランドへ散歩に行こうと言ったが、ケイトは、行きたくなかった。それで、留守番してトブのお守りをすることになった。そこへ、２、３週間前、食べ物を欲しがった原住民の女性がやってきた。彼女は、草の束を差し出した。ケイトは、喜びの声をあげた。それは、オランダガラシだった。ケイトは、お礼に、パンをあげると、彼女はうれしそうに帰って行った。ケイトは、帰ってきたアニーに、その話をすると、アニーは、原住民に理解を示した。さっそく、オランダガラシをひたしてお茶にすることにした。

子供たちは役に立つ
アーサーは、家の裏にどろのれんがの部屋を作ろうとした。ルーシーとケイトは、れんがつくりを手伝った。しかし、すぐに遊びとなり、だれも見ていないときは、どろのボールを投げ合ったり、どろで像を作ったりした。ベンはれんがつくりの監督となった。ベンは、妹たちがふざけるのを見ると二人をどなった。クララは、毎日、汚れた二人を川へ連れて行ってごしごし洗ってやった。一方、ベンは、井戸掘りを手伝った。妹たちには午後自由になる時間があったが、ベンには暇がなかった。そんなベンを見て、ある日、アニーは、お茶の時間に、「川まで散歩してきたら。気分を変えたほうがいいわ。」と言った。

たこ
秋になっていたが、林には、紅葉や枯れ葉はなかった。土曜日の午後、ルーシーとケイトは、繕いや聖書の暗唱をさせられた。ケイトは、どちらも早く覚えたが、ルーシーは繕いは下手で、聖書の暗唱はまだできなかった。天気のいいある土曜日の午後、ケイトがクララに外に出たいと言った。クララは、ルーシーとケイトを散歩に連れて行くことにした。そのとき、ルーシーは、ベンが作ったたこを持って行った。３人は、川の方へ行ったが、ルーシーとケイトは、クララが見えなくなるまでそろそろ歩いた。ルーシーが先にたこを上げたがった。風が強かったので、たこは急上昇した。ルーシーは、たこ糸をひっぱて走ったが、すべってころんでたこの糸を離してしまった。たこは川の向こうに飛んで行き、高い木の間に消えた。ルーシーは泣きべそをかいたが、二人はたこを探しに行こうとしたら、ビリー、バーニー、デイブの３人の少年に会った。アニーに川を越えて北アデレードへ行ってはいけないと言われていたが、５人はとうとう川を越えてしまった。

おまつり
ビリーがたこを見つけたが、細いゴムの木の枝の高いところにひっかかっていて、簡単には取れそうもない。そこで、デイブが、「しばらく追跡ごっこをしよう。」と提案した。ケイトは、わくわくして、クララの呼ぶ声がするのに、男の子たちと遊ぶのに同意した。遊んでいるうち、デイブが、原住民のキャンプに行って、踊りを見ようと、誘った。ルーシーは、最初、気がすすまなかったが、ケイトといっしょに付いて行った。日が沈みかけて、ケイトも気がすすまなくなったが、バニーに「なんだって。」と言われ、あきらめた。
バニーが合図したので、みんなは、木や茂みの間から覗くと、少し離れたくぼ地で、数人の男が踊っているのが見えた。踊り手が入れ替わり、リズムが速くなった。女の子たちが太ももを叩いてリズムをとっていた。ルーシーたちはすっかり魅せられていた。歌声はより早く、より大きくなった。だが、バニーが「もう行く時間だ。」と言ったので、ルーシーたちは急いで川の近くまで戻った。あちこちにルーシーたちを探す明かりが見えたので、みんなで大声をあげた。ルーシーたちは、すっかり安心し、罰せられることも気にならなかった。

冬
ルーシーとケイトは、帰ってから、アーサーに革ひもでぶたれた。そして、日曜の散歩は禁止され、暗唱する聖書の量を１章増やされた。
秋が過ぎ、冬になった。冬はときどき、大雨が降って、道路はぬかるんで、家も雨漏りした。冬じゅう、ベンは、小麦畑をつくるための整地をしたり、大工の見習いや石運びをしたりした。遊びたいと思っていても、アーサーが常に別の仕事を用意していた。ある日、ベンは、アーサーに、「こんな仕事はいやになった。商売を学んで、ライト大佐の測量隊に参加したい。それがだめなら、余暇に勉強したい。」と言った。しかし、アーサーは、「百姓には学問はいらない。」と言って怒った。
ある日、パーカーが立ち寄った。パーカーは、金持ちたちが北アデレードに立派な家を建てたので、屋根に使う繊維性の樹皮を運んだ、と話した。また、海岸で金持ちの荷物を運ぼうとしているとき、あらしに遭い、牛が１頭波に呑まれた、とも話し、金持ちは不愉快だとも言った。

平野
ある日、ケイトが外に出ると、ベンが、羊飼いのロングのところに行こうとしていた。いなくなったヒツジを探すのを手伝いに行くところだった。ケイトは連れて行ってと頼んだが、ベンは、「だめだよ、ぜったいに。」と拒否した。ベンが行った後、アニーからお使いを頼まれた。ケイトは、お使いを済ませると、パークランドをわたり、原住民を求めて探検を始めた。太陽の位置で方向を確認しながら、小川の方へ行き、さらに、低い丘に上って、遠くを見渡した。すると、遠くに一条の煙が見えた。すっと向こうに、ホールドファースト湾に停泊している船も見えた。ケイトは丘を駆け下り、煙のところへ行こうとしたが、両親のことを考えていた。半ば気の進まないまま歩いていたが、やがて、迷子になったことに気がついた。だが、前方に男が立っているのが見えた。男が近寄ってくると、ケイトは悲鳴をあげて逃げたが、男も追いかけてきた。その男は、ロングだった。
ロングは、ケイトと話をして、ベンの妹だと知った。ケイトは、ロングに家に連れて帰ってもらった。ロングは、ケイトに、「船でヒツジと人間がどんどんやってくる。」と話した。帰り道、原住民の焚き火のあとがあった。ロングは、「私たちが来ることを死って片付けたのだろう。」と言った。
ロングが口をきいてくれたので、ケイトはそれほど罰せられなかった。ベンは、しがらく、ケイトを「勇敢な探検者」とからかった。

ヒツジ
ベンは、ロングの犬のローバーといっしょに小川の方を歩いていた。自由な時間ができて最高の気分だった。谷間の入り口の近くで、荷車を引く男に出会った。その男は１年前、海岸でベンとけんかして、助けに来た水夫に殴られたビルだった。ビルは、まだそのことを根に持っていた。ビルは、ベンに縄を投げて、ローバーに荷車を引かせるように命じた。ベンがためらっていると、ビルはかたわらに置いてあった銃を手にした。ベンは仕方なく言われたとおりして大急ぎで逃げた。その後、ローバーも、自力で首輪をはずし、びっこを引きながらベンのもとへ逃げてきた。
ベンは、丘を半ば登ったところで背の高い原住民の男に会った。原住民の男はベンを谷間の羊飼いの移動小屋へ案内した。やせた羊の群れが垣根の中に押し込まれていた。ベンは、小屋の中を覗いた。すると、病気の老人が床に横たわっていた。ベンは、原住民に小川から水を汲みに行かせ、老人に飲ませた。老人は、原住民に「おまえはいいやつだ。ジョー。」と言った。老人はダンという羊飼いで、ベンに羊の面倒をみてくれと頼んだ。ダンはおとといから羊の面倒をみていなかった。
羊達は水が飲みたがっていたので、川の水を飲ませるため。垣根を少しずつ開けてすきまを作ろうとした。すると、数頭の羊が先を争って出ようとした。出て行った羊の何頭かは川の水際のぬかるみでもがいていた。ベンは、もがいている羊をつかまえ、向きをかえて立たせた。ジョーも手伝った。二人は、助け合い、全部の羊を救った。それから、羊に食べ物をやった。ベンは、ローバーに羊の見張りを命じた。
ダンは、自分の死期が近いのを悟っていた。ダンは、ベンのことが聞きたいと言ったので、ベンは、家族のこと、農場の計画、医者になりたいことなどを話した。ダンは、ベンに、「勉強しなくっちゃなんにもできん。」と言って、ワーテルローの戦いで戦死した息子が使っていたラテン語の文法書をくれた。「最高の贈り物です。」と、ベンの目が輝いた。ダンは、さらに、羊を助けたお礼に子羊をくれた。夜、ベンは、羊飼いをずっと見守った。ダンは、長い間、咳が止まらなかった。べンは、ダンの回復を神様に祈った。夜明け前、深い眠りに落ち、翌朝、目を覚ましたとき、ダンはなくなっていた。

遺失物取扱所
ルーシーとケイトが家で雑用をしながら遊んでいるうち、トッブがいなくなった。二人は川の方へトッブを探しに行った。すると、お茶の木の茂みからトッブが、大きな白カモと６羽の子ガモといっしょに出てきた。二人はトッブを抱き上げたが、トッブはそれを嫌がった。仕方なく、二人はトッブの横をゆっくりと歩いた。すると、口笛が聞こえた。二人は、トッブを見捨てて大急ぎで家に戻った。
「ベン！」、二人は叫び、大声で笑った。ルーシーが、ベンの抱いてる子羊に気づいて歩み寄って、子羊を抱かせてもらった。ベンは、子羊をルーシーにあげると言った。ベンは、ケイトにもおみやげにツツジの花をあげた。そこへ、トッブがカモたちを連れて戻ってきた。ベンはトブを抱き上げた。ルーシーは、子羊を「スノーフレイク」と呼ぶことにした。ベンは、トッブにもダンがくれた羊の鈴をおみやげとしてあげようと、その鈴のひもをトッブに結わえた。ルーシーは、「もうトッブを見失わないわ。」と言った。
アニーは、しばらくこの光景をながめていて、いとおしそうにベンにキスをした。アーサーももっと楽しそうに仲間に加わった。そして、「大切な話がある。」と言った。アーサーの話は、町が大きくなっているので、長期にわたって定職につけそうなので、アンガス通りの石造りの家に引っ越そうということだった。みんなの胸が踊った。「ちゃんとした農場の方がいいわ。」とケイトが言った。アーサーは、念を入れて、「農場も手に入れるよ。」と言った。神に祈ったあと、みんなで、「農場に乾杯！」と言って、お茶の入ったコップで乾杯した。

ふさわしい家
ケイトは、ミス＝シンプリングの生地屋に、１年以上前に注文したアーサーの靴のことを尋ねに行った。「調べてみましょう。」と言って小さな部屋に消えて、靴を取ってきた。そこへ、今はガウラーに住んでいるビリーが店に入ってきた。ビリーは、糸を買って、ポップル一家がもといた家の隣に住むおばのところへ届けるところだった。ケイトはビリーに付いて行った。ところが、前の家は取り壊されて、石造りの家が建っていた。ケイトは悲しくなった。ビリーは、ケイトをアンガス通りまで送って行った。
ケイトが家に帰ると、アニーは、２歳半のアダムをあやしていた。ケイトがアダムのお守りを代わると、アニーはお茶の支度を始めた。「レンジが買えたらねえ。」とアニーは悲しそうに暖炉の火を見つめた。ケイトは、アニーの顔にしわが増え、白髪も多くなったことに気づいた。すると、口笛が聞こえた。二人の顔が明るくなった。ベンが帰ってきた。ベンが「パパは？」と尋ねた。ケイトは、ベンを庭へ連れて行った。
ベンが外でまきを切っていると怒った声が台所から聞こえた。アーサーとジョンは、このところよく言い争っていた。ケイトは、ベンに、アーサーをなだめるよう頼んだ。アーサーは、ジョンがクララを芝居に連れて行くことを許そうとしなかった。「劇場は若い娘の行くところではない。下品な話をするところだ。」とアーサーは怒って言った。ベンが間に入った。しかし、アーサーは「じゃまするな。」と言って許さなかった。クララが泣き出して部屋を飛び出した。ジョンは「あなたの態度は寛大とはいえませんね。」と言って、クララのあとを追った。

荷車に乗る
ベンは、港に荷馬車を届けに行くついでに、アニー、クララ、ケイト、トッブを、開港記念日の催しに連れて行くこととした。ルーシーとトッブは荷台の上で興奮してはしゃいでいた。途中、疾走してきたパーカーの馬車がベンの荷馬車を追い越したが、逆戻りしてベンの荷馬車に向かってきた。ベンは道路脇に馬を持っていこうとして手綱を引いた。すると馬は木に衝突した。ベンは飛び降りたが、ケイトとアニーが傾いた荷車にからんでしまった。すぐ後ろで馬車を走らせていた二人の男が助けて、ポップル一家を港まで送ってくれた。一人はルーシーに郵便局前で道を尋ねた紳士だった。
港に着いたときには知事の埠頭開きは終わっていた。埠頭でジャムリング一家に会ったポップル一家は、お昼を分けてくれ、帰りは馬荷車に乗せてくれた。アデレードに近づくと火事が見えた。それはジャムリングの家だった。

困難なとき
ジャムリング一家は、数日ポップル一家が貸したテントで寝泊りした。ジャムリング一家が去ると憂鬱な空気が流れた。アーサーは、新しい生活を求めてオーストラリアにやって来たのに農業ができず、ちっともよくならないと感じていた。アニーは、稼ぎを家族のために使わなければならず、新しい服を買えないクララにすまないと思った。ケイトはアニーに、「私たち、いったい農場を持てるのかしら？」と言った。アニーは、「希望は捨てないでいましょう。いつかは、虹のたもとにたどりつくでしょう。」と微笑んだが、目は悲しそうだった。
ルーシーは、草むらで１シリング硬貨を見つけた。ルーシーは、そのお金で自分たちの農場のためになるものを買おうと考えて、町の競り売り広場へ行った。そこで、壊れて捨てられていた木製の鋤を買った。ちょうどそばにいたビリーに手伝ってもらって鋤をキングウィリアム通りに出し、引っ張って帰ろうとした。二人は、ときどき止まっては引っ張りしてのろのろ進んだ。その途中、郵便局で出会った紳士が通りかかった。紳士は、鋤を馬車の後ろにゆわえて運ぶのを手伝ってくれた。紳士はプリンストンという名前だった。
アーサーは、壊れた鋤を見て、帰ってきたルーシーをどなった。ルーシーは、「早く農場が持てるようになると思ったの。」と泣き出した。プリンストンは、アーサーに、鋤を修理しようと言った。アーサーは、プリンストンを家に招き入れ、お茶を飲みながら二人で農業の話を始めた。プリンストンは、アーサーに、農業について健全な考えを持っていると言って帰った。「なんていうことでしょう。」、アニーは、感嘆の声を上げた。

タイアーズ
アーサーは、プリンストンの所有地のあるパーカー山へ行き、土地を調べて農作について話し合うことになった。プリンストンはそこで材木業も経営していた。そのついでに途中のタイアーズまでピクニックとして子供たちを連れて行くこととし、プリンストンから借りた荷馬車で出かけた。グレンオズモンドへの坂道を登り、丘を下りる途中、雨が降り出した。一家は木陰で雨宿りした。やがて雨が上がって再び次の丘へ進み始めた。タイアーズに着くと、木が切り倒され、谷間に材木置き場があった。そこにはアデレードへ運ぶ材木、厚板などが牛車に積まれていた。美しい木が切り倒されてたのを見てルーシーは悲しくなった。ベンが牛車の御者の助手をする約束になっていたが、その御者は以前、ベンとトラブルを起こしたことのあるビルだった。アーサーは、ベンの不安に同情することなく、ベンに「最善を尽くすんだな。」と言った。そして、荷馬車でパーカー山へ向かった。
ビルはルーシーとケイトを非難がましくながめ、「乗るんだ。」とうなった。そして、ベンをにらんで「じゃまをするなよ。」と言った。牛車は丘と谷間の間を進んだが、途中、また雨が降り出した。後ろから大きな荷を担いだ女がやってきた。ベンは、女の荷を牛車に乗せてやった。雨がどしゃぶりになった。滑りやすい下り坂にさしかかった。すると女は斧を手に取り、木を切り、ビルとベンがそれを道に引きずって行った。次に、女は後車輪に木をわたし、その回りに縄をかけた。さらに、縄を前輪に回し、きつく結んだ。ルーシーとケイトは馬車を降りた。ベンは短い枝で縄をしめて牛車の速度を遅くすることにした。ビルと女は、ベンに「しめろ。」と叫んだ。この方法はうまくいった。牛は女の足より遅いので、女は荷を担いで先へ行った。グレンオズモンドの丘に着くとケイトは、「大きくなったら牛車を運転したいわ！」と言った。

ピクニック
１１月のある日、アーサーがうれしそうに、家族に、「明日からグレンオズモンドの鉱山で働く。給料はいいし、休みの日はプリンストンさんの手伝いをしてパーカー山の地所の検査をすることになった。プリンストンさんは、新年には土地をいくつか分けてくれるだろう。」と言った。そして、翌日、特別なお祝いとして一家はグレンオズモンズへピクニックに出かけた。
そよ風が吹き、雲一つない明るい日だった。ポップル一家とジョンは丘で食事をし、オーストラリアでの経験やイギリスの親類のことを話し合ったり、ゲームをしながら楽しい時間を過ごした。そのあと、アーサーは、これからの働き場所を見せようと、みんなを鉱山に案内した。それから、ルーシーとトッブはどこかへかけていった。アーサーは、ケイトにアダムのお守りを言いつけて、ジョンとさらに丘の頂上へ上った。
木陰でルーシーとトッブを見つけたケイトは、アダムをルーシーにまかせて木陰で休んだ。ルーシーとトッブはアダムを連れて丘の窪みの方へ行った。その前方で銃声と犬の吠える声が聞こえた。ルーシーは、アダムに、ケイトのところへ戻るように言った。丘の上の方から逃げて行く３匹のカンガルーと、それを追う男と少年が現れた。１匹のカンガルーが一瞬足をとられてよろめき、袋から子供を投げ捨てた。そのとき、銃声が響き、そのカンガルーが倒れた。カンガルーの子供は丘を跳ね登って行き、草やぶに飛びこんだ。それに魅入られたアダムが後を追った。そして、アダムの押し殺したような悲鳴が聞こえた。ルーシーとトッブがアダムの名前を叫ぶが、返事が返ってこなかった。それに気付いたケイトは、ルーシーに、アーサーに知らせに行くよう指示した。アニー、クララが走りより、アーサーらも丘を降りてきた。ケイトは、草の中の大きな穴に落ちそうになった。そのとき、アーサーがケイトを投げ飛ばし、穴の中を覗いた。そして、アダムが落ちているのを確認した。みんなは大きな衝撃を受けた。ジョンが穴の中に縄を降ろし、アーサーが降りて行った。アダムは頭を打って死んでいた。
家に戻ると、子供たちはひどく泣いた。ケイトとルーシーは「わたしのせいだ。」と言って自分を責めた。クララが二人をなぐさめた。

収穫
アーサーは、ケイト、ルーシー、トッブに、パーカー山の麓のプリンストンの畑の大麦の刈り入れの手伝いをさせた。ほかにも子供たちが手伝いに来ていた。ルーシーとトッブは、麦の穂を打ちつけて穀粒を落とす仕事をした。ケイトは、その仕事がつまらなかったので、責任者のパーカーに頼んで別の仕事をさせてもらうことにした。ケイトは、麦わら束を運ぶ仕事を手伝ったが、二人の少年がかまで麦の茎を切り刻んでいたのを見て、自分にもできると思って、肉切り用ナイフで茎を切り始めた。しかし、それは思った以上の重労働だった。赤い巻き毛の少年がケイトに話しかけてきた。彼は、以前、いっしょに原住民の祭りを見たバーニーだった。ケイトは、自分のナイフをバーニーに研いでもらった。ケイトがナイフを受け取ると、誤って手を切ってしまった。ある青年がハンカチをくれたので、それを手に巻きつけた。彼はペティウェルの息子だった。ルーシーとトッブもかけつけてきた。少年たちは作業に戻った。ルーシーは、ケイトの手を見てもらうため、ジャムリング夫人を呼びに行った。
午後、子供たちはふざけはじめた。トッブも畑から抜け出そうとしたが、刈り株につまづいて転んだ。ルーシーは、トッブを脱穀の場所に引きずって行った。しかし、トッブもルーシーもくたくただった。そこへプリンストンがやってきた。プリンストンはルーシーとトッブに両親のことを尋ねた。ルーシーが、父はタイアーズで働いている、と返事すると、プリンストンは、アーサーの農業の技術を惜しんで、「きみたちの父さんにぴったりする仕事をお世話させてもらうよ。」と言って、タイアーズへ向かった。

さよなら、アデレード
２日後のお茶の時間、アーサーは、家族に、プリンストンがパーカー山の土地の一部を提供してくれ、プリンストンのために数年間働けば自分たちの農場が手に入るだろう、そして、ジョンとクララも結婚してそこに住む、と言った。農場！　結婚！　みんな、声をあげて喜んだ。一家はクリスマスの３日後に引っ越すことにした。ベンも港から帰ってくることになった。
ジョンは、ドローバーズアームズ酒場の外でベンを見かけて、酒場に誘い、ビールを勧めた。ベンは気がすすまなかったが、ジョンに付き合った。ベンは、ジョンに、農夫になりたくないが、父さんはぼくが勉強するのをいやがるんだ、といい、ジョンも、きみのおやじさんは付き合いにくい人だ、と言った。勉強の話になって、ベンの先生でもあるストーン牧師が、ベンはイギリスに戻って勉強すべきだと言っていたことを話した。
クララは、ミス＝シンプリングの店で、花嫁衣裳用の水色の絹の生地を受け取った。クララは、生地を買うためずっと少しずつお金を払っていたが、ようやく最後のお金を払った。

新年
ポップル一家は、やっと手に入れたパーカー山の農場に到着した。四角い石造りの家とその両側に離れ家があった。家に中からビリーが出てきた。ケイトが馬車から飛び降りて、二人はしっかりと抱き合った。ルーシーたちもお互い抱き合ってキスしあって、みんな笑った。ビリーの家もプリンストンのところで働いていた。家の中は、３つの寝室、煙突が二つの暖炉がある居間、大きな台所があり、プリンストン家のメイドがお茶の用意をしていた。お茶の時間、みんなは思い出にふけり、未来への幸せな計画を話し合った。
翌日から４日間、荷を解き、料理を作り、洗濯し、クララの結婚式の日の朝がやってきた。プリンストン夫人は、自分の家の庭を結婚式のパーティーのために提供してくれた。朝早く、アーサーは、馬車で一家をポップル家の地所の端にある峡谷を流れる小川に連れて行った。そこでピンクに薄く染まった白いお茶の木の枝をいくつか切り、野の花を取ってきた。プリンストンは、ベランダの入り口に鉄線でアーチを作り、バラのつるをはわせていたが、ベンとケイトは、お茶の木の枝をアーチ道の鉄線にくくりつけて、花嫁と花婿が客を出迎えるところを緑と白の枠にした。野の花はデーブルの上にまかれた。
一家は、式を居間で挙げ、庭で結婚式のパーティーをおこなった。回りの農場や町から人々がやってきた。みんな新年の結婚式を祝った。「新年おめでとう！」と回りの人が言う中で、クララとジョンは、さよならを言った。両親と子供たちは幸せいっぱいに手を振り、月の光が降り注ぐ中、クララとジョンが新家庭に向かって歩くのを見送った。ポップル一家の新しい生活が始まろうとしていた。（おわり）